親子は血縁の関係、夫婦と養子は約束の関係

 聖書を理解するためのひとつキーワードとして、救出の対象が、血縁関係から約束の関係へと移ったということがあげられます。

 かつて、モーセが仲介者として神との間で結んだ契約は、イスラエルの子孫に関するものでした。つまり、親子関係が基盤になっていて、血縁関係に対して向けられたものでした。

 親と子のつながりは遺伝的、生物的な関係です。これを比ゆ的に、人は、血という言葉を使って表象することが多いですね。血縁関係というふうに。

 一方、イエスを仲介者として神と結ばれた契約は、キリストを信じると約束した人たちに対してのものでした。救出の対象は、イスラエルの血縁関係ではなくって、「イスラエルの残りのもの」と「諸国民」に変更されたのでした。

 つまりこれは、約束による関係なんです。夫婦というのは、もともとは他人でした。それが、結婚という約束によって、親族としての関係に入ります。

 もともとは他人だったのに、後に約束によって結ばれた関係に入る。養子縁組もこれと似ています。

 血というよりも、お互いの信頼関係が基盤になっています。

モーセを仲介者とした契約 血縁を基盤とした関係
エスを仲介者とした契約 信頼を基盤とした関係

 パウロは、信仰についてたくさん語ります。実はこれは、モーセを仲介者とした契約が血縁を基盤とした関係であったので、それが変わったということを、伝えたいがために、たくさんの言葉を費やしています。

 救いは、血縁や律法ではなくなったんだよとパウロは、熱心に伝えています。