裁くってどういうことかわかる?

「裁くってどういうことかわかる?」

「わかんない」

「たとえば、ワタル君の靴がなくなったとするね。帰ろうとしたら、下駄箱で靴がない」

「うん」

「だれかがとったんだ。盗まれちゃったんだ」

「盗まれちゃったの?」

「うん。誰かが盗んだんだ」

「ワタル君は、どんな風に感じると思う?」

「『だれだとったの』と思うと思うよ。買ってもらったばかりの靴だったらショックかな。」

「そうだね。とてもいやな思いをするね。盗んだ方は裏で笑っているかもしれないよ。いじめかもしれないし。」

「ひどいね」

「うん、ひどい。盗むのが悪いってことはわかる?」

「うん。悪いことだと思う」

「そんなとき先生は、どうしたらいいと思う?」

「犯人を捜す。靴を取り戻す。盗んだ子を叱る。ひどいことをしないように注意する」

「そうだね。叱らないといけないね。」

「ワタル君には、先生は、どう接したらいいと思う?」

「靴は見つかったよ、盗んだ子は叱っておいたっていう。」

「うん、そうだね。悪い子には叱った、悪いことをしていない子は慰めた。わかるかな」

「うん」

「これが、裁くってことなんだよ。」

「えっ、そうなの? 意外と簡単だね」

「うん。」